薄刃包丁の研ぎ方
薄刃包丁は野菜用として、むき物・かつらむきに最適な日本料理にはなくてはならない包丁です。刃の形状としては直刃の包丁ですので、出来るだけ真っすぐに研いでください。そですが、厳密には薄刃包丁は刃先が真直ぐで平らだと思われがちですが、ほんの少し「たいこ刃」になっている方が使いやすいと思います。「たいこ刃」というのは、まな板に包丁の刃を当てたとき刃の刃元・切っ先が微妙に浮いている状態の刃です。
これからご説明する研ぎ方は初心者の方を基準としたもので、各工程を詳しくご説明しています。
研ぎ慣れた方はこの工程通りに進めなくても、ご自分の判断で工程(小刃研ぎなど)を省略して進めて行っても良いと思います。
薄刃包丁を研ぐ上で大事なポイント
- ①切り刃はしっかりと研いで薄さを維持してください。
- 薄刃包丁は切れ味が求められる包丁ですので、切り刃に厚みがあると鋭い切れ味が出ませんので切り刃全体の薄さを常に維持してください。
- ②直刃の刃線を崩さない事。
- 薄刃包丁の刃線はほぼ直刃になっているので、刃線が乱れていると切れ残りが出るので必ず刃線が崩さないようにする必要があります。
- ③たいこ刃を意識すること。
- 上記に書いています通り、薄刃包丁は直刃ですが、完全な直刃ではなく切っ先と刃元が少し浮いた状態のたいこ刃にするのが理想です。
薄刃包丁は刃の元厚が薄く、切り刃の広いため刃先の鋼の箇所は思っている以上に研ぎにくいです。
そのためよりハマグリ刃を意識して刃先に砥石を当てる感覚で研がないと、切り刃の真ん中が凹んだ状態になりやすいので注意が必要です。
包丁の状態を確認する。
まず研ぎを始める前に包丁全体を目で確認してください。包丁研ぎはただ切れ味を戻せばいいという訳ではなく、包丁の正しい形を維持するためにも研ぐものです。
それを意識しないまま研ぎ進めていくと包丁の形が崩れて包丁の寿命が短くなります。そのために必ず刃の状態を確認する癖をつけてください。
丸くなった刃先を研ぐ
小刃研ぎをします。
切れなくなった状態とは刃先が丸まった状態です。まずそこを直すために刃を45度に立てて刃先のみ(小刃研ぎ)をカエリが出るまで研ぎます。
使用する砥石は中砥石(#1000)を使用します。
※ もし包丁に刃こぼれや型崩れが有る場合はこの段階で修正します。
きちんと包丁の形が元に戻るまで研ぎ続けてください。
刃先に二段刃が出来ます。
刃を立てて研ぐと刃先に小さな二段刃が出来ます。目で確認しますと光の加減で刃先に白い線が見えますが、それが刃先が二段になっておりこれを「小刃」と呼んでいます。この小刃(二段刃)が一番刃先の先端になり、ここを基準に研ぎ進めて行きます。
※ この小刃があることによって、この先研いでいく箇所と刃先の状況が分かりやすくなります。そして小刃を最初に付けて行くことで、研ぎ進めたときに刃先が薄くなり過ぎないためにも最初に小刃付けすることをお勧めします。
たいこ刃を意識する
上記に書いています通り薄刃包丁はたいこ刃に研ぎます。
この段階で刃の真ん中付近が少し膨らまして切っ先と刃元を浮かすように形を整えてください。
荒砥石で研ぐ
小刃(二段刃)が消えるまで研ぐ。
この二段刃の状態ですと、刃先が厚いのでこのままでは鋭い切れ味にはなりません。そのため荒砥石でしっかりと二段刃が消えるまで研いでいきます。
切り刃全体に当てることを意識して常に目で確認しながら研いでください。
ここで研ぎムラがあると次の中砥石の研ぎが綺麗に研げません。
※ 柳刃包丁は切り刃に厚みが残ると鋭い切れ味が出ませんので、しっかりと切り刃全体を研いで刃を薄くしてください。
しのぎを崩さない様に注意が必要です。
この時に注意していただきたいのが、和包丁(本焼きを除く)は鋼と軟鉄の合わさった包丁ということです。切れ刃部分も2/3は軟鉄です。そこを均一の力で研ごうとしますと軟鉄部分ばかりが研げてしまいしのぎ筋が崩れてしまいます。一度しのぎ筋が崩れてしまいますと、元通りに戻すのは非常に困難ですので注意してください。
上手く研ぐコツ①
切り刃全体を綺麗に当てるコツは、左指で刃先を砥石に押さえつつ、柄を握っている右手首を少し前にひねるイメージです。
左指の力が強すぎると刃先が研げ過ぎてしまいますし、右手首をひねりすぎるとしのぎ筋が崩れますので注意してください。
薄刃包丁を研ぐ時の注意点
薄刃包丁を研ぐ時に注意していただきたいのが、一回で切れ刃全体を研ごうとしないことです。薄刃包丁は厚みが薄く、切れ刃が広いので一度で切れ刃全体を研ごうとするとなかなか研げません。
仮に研げたとしても刃が薄くなり過ぎるため、刃こぼれがしやすい刃になります。まずは切れ刃の半分から刃先(主に鋼の箇所)を研いで、そのあとに切れ刃全体に砥石を当てて厚みを調整する研ぎ方がいいです。
-薄刃におすすめの荒砥石-
中砥石で研ぐ
ここから本格的に刃を付けていきます。荒砥の時と同じく、中砥石で刃を立てて軽く小刃引きをしてください。
※ ここで強く小刃引きをすると刃が厚くなりますので軽い力で小刃引きしてください。
荒砥の研ぎ傷を消す。
荒砥石で研いだ切れ刃の表面は非常に荒くなっています。中砥石でその研ぎ傷が消えるまで磨いてください。刃は非常に薄くなっている状態ですので、刃先を研いでしまいますとカエリが簡単出て刃が減ってしまいますので刃先まで研がない様にしてください。
切れるように刃を付ける。
ここから本格的に刃を付けて行きます。刃先に出来た小刃が消えるまでしっかりと研いでください。ですが、薄刃包丁の鋼は思いのほか薄く、刃先になかなか砥石が当たりません。他の包丁よりハマグリ刃を強く意識しないと刃先に砥石が当たらない上、うまく行かない場合は、ハマグリ刃とは反対の状態の鋼と地金の境目が減り、はまぐり刃と反対の状態になり境目がへこんでしまう事もあります。そうなると、切り刃が広がりやすくなり刃が薄くなり過ぎるため、刃こぼれがしやすく刃の持続性も悪くなります。そのため意識的に手首を内側に返して刃先に砥石を当てにいく感覚で研ぐことをお勧めします。
上手く研ぐコツ②
刃先に上手く砥石を当てるコツは、左指は刃先を押さえつつ、柄を握っている右手首を内側に返す感覚で研ぐことです。
そうすることによって少しだけ刃が起きますので刃先に当てやすくなります。
刃線は常に確認しながら研いでください。
薄刃包丁はたいこ刃ですが、刃線はほとんど直刃になっています。
直刃の包丁は刃線が非常に崩れやすく、一度崩れてしまうと元に戻すのがとても難しくなります。そうならないためにも、研ぐ時は常に刃先の刃線をチェックしながら研いでください。
刃先の小刃を確認する。
目で刃先全体を確認して小刃が消えているかを確認してください。
もし小刃が残っている箇所が有りましたら、そこ箇所に左指を押さえて研いでください。小刃が消えている状態を確認出来ましたら基本的にはこの段階でも切れる刃は付いています。
-薄刃におすすめの中砥石-
仕上げ砥石で研ぐ
中研ぎの時と同じように、仕上げ砥石で軽く小刃引きをします。
中砥石の研ぎ傷を消す。
より切れ味を良くするために仕上げ砥石で研いでいきます。まずは切れ刃全体に出来た中砥石の研ぎ傷を仕上げ砥石で磨いていきます。
カエリが出てしまいますので刃先は研がないでください。
仕上げ研ぎをする。
刃先の小刃が消えるまで研いでください。中砥石の研ぎと同じように仕上げ研ぎの段階でもハマグリ刃を意識して研ぎますので、少し刃を起こして研いでください。
-薄刃におすすめの仕上砥石-
裏押しをする
仕上げ砥石を使う。
切れ刃を研いだ時に出たかえりを取るために裏面を研ぎます。
和包丁の裏は凹んで(裏スキ)おり簡単に刃先に当たる構造になっております。使用砥石は仕上げ砥石だけで大丈夫です。
ベタに砥石を当てる。
左手に持ち替えていただき、裏面全体を砥石に当ててください。
必ず裏面全体を砥石に当ててください、刃を起こして角度を付けないでください。裏押しをするときは必ず水平な砥石を使ってください。
上手く研ぐコツ③
裏を均一に当てるコツは、刃を押さえる指(右指)を刃のセンターに置く事です。
小刃引きをする
この時点で切れる刃は付いておりますが、この状態は刃先が薄すぎて刃こぼれがしやすくなります。
そのため最後にも小刃引きをして刃先に強度を持たせることをお勧めします。
刃を立てて軽く小刃引きをする。
使用する砥石は仕上げ砥石が理想です。
もし仕上げ砥石がないのでしたらお持ちの砥石の中で一番細かい砥石を使用してください。その場合はあまり力を入れて小刃引きすると刃厚くなるので軽い力で引いてください。
刃を45度くらいに立てて、刃先全体をかえりがでるまで軽く研いでください。刃先を確認して全体に白い線(小刃)が出来ているか確認してください。
上手く研ぐコツ④
薄刃包丁は小刃が厚いと切れ味が鈍ってしまいますので、1回~2回くらいで小刃を引けるようになれば切れ味と刃の耐久性を両立することが出来ます。
新聞紙で試し切りをする
研いだ包丁がきちんと刃が付いているか新聞紙で試し切りをして切れ味をチェックしてください。新聞紙がスムーズに切れましたらきちんと刃が付いています。
もし新聞紙が引っかかる箇所があったらその箇所の刃はまで研ぎきれていません。